オンサイトコンテストスタッフのおしごと
この記事はCompetitive Programming (2) Advent Calendar 2018 - Adventarの15日目の記事として書かれました。
この記事で言いたいこと:
ACM-ICPC OBOGの会では、競技プログラミングが大好きで、ICPCを引退した人達を常時募集しています!
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競技プログラマの皆さん、今日も一年お疲れ様でした。今年はオンサイトコンテストに参加できましたか?今年、僕はオンサイトコンテストに4回参加しました・・・スタッフとして。内訳は、IOI、所属企業主催のコンテスト2回とICPCアジア地区予選横浜大会です。
この記事では、今年の経験をもとに非企業コンテストのオンサイトスタッフの仕事を紹介します。
どんな人がスタッフをやっているのか
IOIやICPCのスタッフは主に次の2種類に分けられます。
- コンテスト周りの仕事をするスタッフ
- コンテストとは関係のない仕事をするスタッフ(受付やクロークなど、通称学生バイト)
前者は競技プログラミング経験者が担当します。後者はコンテスト会場近隣の大学またはホスト校から来ていることが多い印象です(詳しい出元はしらない)。この記事では、主にコンテスト周りの仕事をするスタッフの話をします。
コンテスト周辺の仕事をするスタッフを競技プログラミング経験者から選出する理由は、僕が効いた範囲では
- コンテストのルールを把握している
- 印刷物を配布の失敗がコンテスタントに影響を理解している
という部分が大きいそうです。後者はコンテストの結果や公平性に大きな影響を及ぼしかねないので、特に重点を置いているように感じます。
スタッフの年齢層はコンテストの選手よりも高めになります。理由は
- 参加権を持っている人たちはコンテストに参加している(それはそう)
- スタッフの募集がOBOGの会に送られている(ICPC)
- 選手の年齢が若すぎる(IOI)
といったところでしょうか。ICPCにおいては、参加権を失っていると(WF2回出場引退の猛者でない限り)修士2年以上になるので、社会人の割合が多くなります。
突然ですが、ここでオンサイトコンテストの楽しみ方を紹介します。
そういえば、オンサイトプロコンの社会人スタッフを眺めながら、「日本の平均年収を上回っている人達が、風船配りなどの雑用をほぼ無償でやっている」と考えると、めちゃくちゃ笑えてくるのでおすすめです。
— 見下げ果てた先輩 (@blue_jam) December 8, 2018
事前にスポンサー企業の求人を調べておくと、年収の下界がおおよそわかるので、より楽しめるようになります(スポンサー企業に属しいているOBOGも多い)。スタッフの中に所属企業がわかっている人がいれば、その企業の求人を調べましょう。
スタッフの仕事
ICPCのスタッフの仕事は次の記事でも紹介されています。
仕事の割り当てはコンテスト直前まで決まっていないことが多いです。仕事の割り当ては、コンテスト前日・当日に状況に応じて運営を管理している先生が割り当てたり、あるいは、人が足りていない場所に自主的にカバーに行ったりして決まります。
会場の準備・後片付け
会場の準備では
- 電源・ネットワーク・マシンの配置・回収
- マシンのセットアップ・確認作業
- 椅子の配置
- 配布物(Tシャツ、飲み物、マニュアルなど)の配置
- 風船の準備(ICPC)
を主に行います。ICPCでは、会場の準備・後片付けに学生バイトの人たちも加わっていました。
電源・ネットワーク・マシンの配置がどの程度スタッフの仕事になるかはコンテストによって異なります。
IOIでは全部業者がやっていました。
今年のICPCで普通のスタッフが行った電源・ネットワーク・マシンの配置は、配線の固定程度でした。ただし、今年はコンテストと懇親会が同じ場所で行われたため、電源・ネットワーク・マシンはコンテスト終了後にスタッフ総出で片づけました。
受付・クロークの支援(ICPC)
受付・クロークは学生のバイトの人が行いますが、時々コンテストルールに関わる質問が選手またはバイトから出てきます(「これは持ち込み可能か?」)。それらの質問についての回答はコンテストのルールを把握しているスタッフが行います。
手荷物検査
非企業コンテストではコンテスト会場に持ち込めるもの・持ち込めない物が定められています。選手入場時に持ち込めないものがないかチェックします。
コンテスト中の仕事
コンテスト中は主に次のことをやります。
- 物の配達(風船、印刷物、食べ物)
- コンテスト会場のパトロール
- トイレの案内(IOI)
- 解説中継(よく知らない)
大部分のスタッフは物の配達かコンテスト会場のパトロールになります。
コンテスト会場のパトロールでは、マシンやネットワークでトラブルがあったときに対応するのが仕事になります。(大体の場合は、困っている人を見つけて、対応ができる人を呼ぶまで。)
スタッフをやることの利点
コンテストグッズ
スタッフをやるとコンテストグッズ(主にTシャツ)がもらえます。僕はこれで1週間分のアルゴリズムTシャツを手に入れました。また、ICPCではスタッフとして参加したことの証明書(Certificate)がもらえます。
慰労会が行われることがある
コンテスト運営の思い出話を話すオフ会です。
観戦ができる
コンテスト中はスタッフ控室で問題や順位表を眺めています。おそらく、最もコンテスト会場の近くで観戦ができます。(もちろん仕事が最優先ですが)
スタッフをやるようになった理由
僕がスタッフをやるようになった理由は「ICPC OBOGの会に勧誘されたからなんとなく」です。僕がICPCに参加していた頃はかなりOBOGの会の勧誘が盛んだったので、引退とともに直ちにOBOGの会に入会しました。
そして、社会人になって東京に来て、「ICPCのスタッフを募集します」という案内を見て「お世話になったコンテストだから、手伝いたいなぁ」という(わりと軽い)感じでスタッフに応募しました。
軽い決意でスタッフに応募して、行ってみると大変でしたが、参加して後悔したことはないです。理由は、コンテストが終了すると「無事に終わってよかったな」という達成感があることと、何よりコンテスト終了後にコンテスタントが楽しそうにしているのを見ると嬉しいからです。コンテストに参加している選手を見ていると、今まで選手として参加していい思いをさせてもらった分を、次の世代につなげられているという喜びを感じます。おそらく、これからも可能な限りスタッフとして参加し続けるのだと思います。
ところで、ACM-ICPC OBOGの会(通称JAG)では近年スタッフの高齢化が進んでいます。また、最近はICPCのスタッフの集まりが悪いという危惧が上がっていたりします。競技プログラミング経験者で、ICPCの参加権を失った人はぜひJAGに入会をよろしくお願いいたします。
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JAGのICPCスタッフ以外の仕事内容は次のブログ記事に詳しく載っています。
番外編:交通費や宿泊費を出してもらうのは申し訳ない?
時々、「スタッフに興味があるけど、遠方に住んでいるので交通費や宿泊費を出してもらうのが申し訳ない」と言ってスタッフに応募することを躊躇している人を見かけます。実際、修士2年のとき僕は福岡に住んでいたのでICPCスタッフとしての参加を見送った経験があります。
実際にスタッフになって経験を積むと「学生はそんなことを気にしなくていいのでどんどん応募してほしい」という気持ちになってきました。コンテストを運営している偉い人たちはスタッフにお金がかかることよりは、必要な人数のスタッフが集まらないことを心配していることの方が多いような気がします。IOIでもICPCでもスタッフが足りないのではないかという危機感が漂っていました。
コンテストを運営する上での一番の問題はスタッフが集まらなくて、コンテストの運営が成り立たなくなることです。経費のことは気にせず、どんどんスタッフに応募してもらえたらと思います。(十分な人数が集まって、遠方から人を召喚する必要がなくなったら、運営側からお礼兼お断りのメールが来ると思うので、みんな気にせず応募しましょう。)